11.タッチング

「タッチング」というと特別なもののように聞こえますが、タッチングとは人の肌に“触れる”ということです。「タッチング」とは、「スキンシップ」、皮膚と皮膚との触れ合いによる愛情の交流であると言われています。

イメージするのは、母親が子どもを愛おしく、よしよししてあげている感じでしょうか。おじいちゃんおばあちゃんの脚をさすってあげている感じでしょうか。皆さん、大切な誰かを思い浮かべるのではないでしょうか。

 

当サロンのトリートメントは、「アロマは究極のリラクゼーション」という言葉どおり、精油の作用とキャリアオイルの働き以外に、タッチングがもたらす効果を重視し、ゆっくりとしたスピードなめらかなリズム柔らかいタッチで、心と体をゆるめていきます。

アロマテラピーにおける「タッチング」は、下記のように様々な心身への効果があります。

 

 【肉体的効果】

  1. 精油、キャリアオイルの皮膚吸収を助ける
  2. 緊張した体を緩め、リラックスさせる
  3. 血液、リンパの流れを促進する
  4. 体内の毒素、老廃物の排泄を助ける
  5. 痛みを緩和する
  6. 皮膚の状態を向上させる
  7. 免疫系を刺激し、病気にかかりにくくする

 

 【心理的・精神的効果】

  1. 精神的な緊張をときほぐし、リラックスさせる
  2. 体のエネルギー(気の流れの)バランスをとる
  3. 体内での特定の部分への意識を集中させる
  4. 自己の身体に対する認識を高める
  5. 心と身体の感情的なつながりに対する認識を高める

 

桜美林大学教授、臨床発達心理士である山口創先生は、「人と人との触れあいは人生に幸福感をもたらす」と主張され、テレビ出演や著書も多数あります。

山口先生の「人は皮膚から癒される」という著書から、皮膚のメカニズムと触れるという行為がもたらす効果について抜粋しました。

 

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皮膚はストレスを感じる

皮膚で起こる血管と立毛筋の収縮という二つの現象は、心理作用とも密接に関連している。多くの動物では恐怖を感じると鳥肌が立つ。鳥肌が立つことで体を大きく見せたり、脅威があることを仲間に知らせる役割がある。また恐怖で血管が収縮することは、外敵に襲われたときの外傷による血液の流出を最小限に抑える役割もある。

(中略)

また恐怖だけでなく、仲間はずれにされて孤独を感じた人は、指や鼻や額の温度までも下がることがわかっている。

ストレスは体温を低下させ、それは代謝や免疫機能までも弱めてしまう。

よく「顔面蒼白になる」とか「肝を冷やす」というが、実際に体温が下がっているのだ。

赤ん坊の研究でも、ストレスを与えると鼻や額の温度が下がることがわかっている。

このように心理的にストレスを感じると、交感神経優位となり血管と筋肉が収縮し、体温が低下します。体温が下がった状態が続くと、健康状態に影響を及ぼすことになります。 

 

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皮膚を温めると心が温まる

米国の行動経済学者ローレンス・ウィリアムズとジョン・バーグは、被験者に「ある人物のことを書いた文章」を読んでもらい、その人物の印象について評定した。すると、手に温かいコーヒーを持った人は、他者の人格を「親切」「寛容」だと判断した。

その後の実験では、皮膚を温めると、人との心理的距離が近くなることや、人を信頼しやすくなることもわかっている。この実験では手の温度を操作したわけだが、手でなくてはいけないわけではなく、どの身体部位であっても同じ結果になるという。つまりは、全身のどの部位でも皮膚を温めると人に温かくなるのである。

なぜこのようなことが起こるのだろうか。

その理由は、脳の「島皮質」と「線条体」が、身体的な温かさと心の温かさの両方に関与していることにある。つまり、身体的な温かさを感じると「島皮質」と「線条体」が興奮する。これらの部位は心理的な温かさに興奮する部位でもあるため、他者に対しても温かい気持ちが高まるということになる。

体を温めることで、気持ちに影響を与えることができるなんて驚きです。脳と皮膚は、温かさを共有しているのですね。

胎児が生育する段階において、皮膚と脳神経は同じく外肺葉から分裂して発生すると言われています。つまり同じルーツを持つということが分かっているのです。根が同じということから推測できるように、皮膚と脳のコンディションは密接に関連していて、実際、心地よいタッチングによって皮膚に安らぎが伝われば、直接タッチすることができない脳までも刺激して、安らぎを感じることができると言われています。つまり、肉体的な疲労のみならず、精神的なストレスを負った人をいたわるには、肌を温めてゆるめたり、優しくタッチすることが、とても有効なのです。

 

【体】緊張した体を緩め、リラックスさせる

【心】精神的な緊張をときほぐし、リラックスさせる

 

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では、触れるという行為によって、どのような変化が起こるのでしょうか。

米国の心理学者、アマンダ・ハーンたちが行った実験では、参加者の女性に対して、実験者から触れられたときの顔の温度の変化をみた。すると実験者が参加者の顔や首に触れたとき、腕や手の平に触れたときよりも、温度が高くなることがわかった。

人に触れられるだけでも、触れられた人の皮膚温は上昇するのだ。

触れることは体温の変化と関係しているため、現代人に多いうつ病や、摂食障害発達障害などの心の問題の克服のヒントになるに違いない。

 温めるということをしなくても、触れるだけで皮膚温が上昇するのですね。皮膚温があがったということは、血流がよくなったということ。体液の流れがよくなった結果、体内の毒素、老廃物の排泄を助けることになります。

前述の実験と同様、体が温まると、心も温まり精神的にも影響を与えたのではないかと考えられます。

 

【体】血液、リンパの流れを促進する

【体】体内の毒素、老廃物の排泄を助ける

【心】心と身体の感情的なつながりに対する認識を高める

 

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触覚は感情に直結している

皮膚には4種類の触覚の受容器があり、それぞれ異なる物理的な性質に反応しそれを脳に送り知覚している。

ところが、最近、皮膚にはもう一つ、性質の異なる触覚の受容器があることがわかってきた。それはC触覚繊維と呼ばれ、神経線維の末端が枝分かれして皮膚に入り込んで触覚を直接知覚している神経線維の束である。これは、「触れて気持ちいい」とか「触れた感触が気持ち悪い」といった感情と関わる神経線維である。

興味深いことに、このC触覚繊維が興奮するための物理的な条件というのがある。それは触れるものの速度と柔らかさが重要な要素である。速度に関しては、秒速3cm~10cm(ピークは5cm)ほどの速度で動く刺激に対してもっとも興奮する。また柔らかさに関しては、ベルベットのような柔らかい物質に興奮する。
だから人の手でゆっくりと手を動かしてマッサージをするような刺激に対して、興奮することになる。
そして脳では島皮質や線条体といった、情動や自己の感覚や身体感覚にかかわる部位に到達する。
またこのC触覚線維の興奮は脳内ではセロトニン神経を活性化させることもわかっている。だから抑うつや不安の高い人にゆっくりした速度でマッサージをしてあげると、脳内でセロトニンがつくられて症状が軽くなるのだ。

 

人の手で触れる意味

英国の神経科学者、インジー・クレスたちの実験では、実験参加者の腕を、「なでる」「タッピングする」という2種類の触れ方で刺激した。このとき「人が手で直接触れる」条件と、「ベルベットを巻いた棒」を用いて触れる条件を比べてみた。その際、触れる人の手とベルベットでは、触れる圧やスピード、温度も統一して、触れられた人の脳活動を測定してみた。

その結果、やはり人が触れた方が、ベルベットで触れるよりも、全体的に脳の活動がより大きいことがわかった。触れた刺激の性質を知覚する脳の活動の大きさはどちらも同じだったが、感情に関わる「島皮質」の活動は、人の手で触れられる方が大きかったのだ。

ベルベットの刺激と、実際の人の手の刺激は、物理的には似たものだ。それにもかかわらず、人の手で触れられた方が、感情に関わる脳の活動が大きかったのだ。島皮質は痛みの体験や喜怒哀楽や恐怖などの感情の体験に重要な役割を持つ。

(中略)

そして2種類の触れ方を比べてみると、「なでる」方が、「タッピング」よりも脳の活動が大きいこともわかった。それは直接手でなでられることで、「相手に大切にされている」、といった感覚が起こり、自尊心が高まるためであろう。

この実験から、単純になんでもよいから触覚刺激があればよいわけではないことがわかる。

 「人の手で触れる」「撫でる」という行為は、大切に扱われている安心感と心地よさを生みます。同じ触覚刺激だとしても、按摩器やマッサージチェアとでは効果が違うのです。

よいタッチングによって、快情動が高まると、ノルアドレナリンセロトニンといった神経伝達物質が分泌され、痛み刺激を脳に伝えることを抑制します。安心感や幸福感を得ることが、結果的に痛みを和らげることにつながると考えられています。

 

【体】緊張した体を緩め、リラックスさせる

【体】痛みを緩和する

【心】精神的な緊張をときほぐし、リラックスさせる

 

当サロンのトリートメントは、痛みを緩和するといった、体の機能の回復に直接アプローチするものではありませんし、凝りのあるところに強い刺激を与えることもしません。なめらかなオイルの上に手を滑らせて、精油の成分を肌から身体の中に届けていきます。力の強弱はつけますが、あくまでもゆっくりと撫でさすることで、心身のリラクゼーションを促し、全身のバランスを整えていくものです。

 

【体】精油、キャリアオイルの皮膚吸収を助ける

【体】皮膚の状態を向上させる

【体】免疫系を刺激し、病気にかかりにくくする

【心】体のエネルギー(気の流れの)バランスをとる

 

セラピューティック・ケア

方法

セラピューティック・ケアは、1996年英国赤十字社が開発した手技である。

方法は、筋肉の中でもっとも緊張する部位である、肩や背中やふくらはぎを、なでたり(エフルラージュ)、こねたり(ニーディング)することで、循環機能を高め、患者の心理的なストレスや緊張をほぐすことである。

結果

2014年、日本セラピューティック・ケア協会の施術者たちに協力してもらい、触れることによるオキシトシンコルチゾール濃度の変化を明らかにする実験を行った。実験では、施術者が初対面の参加者に1体で、肩と背中に30分この施術を行い、その前後で採血してオキシトシン(絆を形成するのに重要な役割を果たすホルモン)の濃度を測定するというものだった。30分間何もせずに座っていることで起こる変化もあるため、統制群も設けた。

施術を受けた人のオキシトシンレベルは上がってリラックスしたわけだが、施術者の上昇はそれ以上に大きかったのだ。ストレスホルモンのコルチゾールの低下も同じく施術者がもっとも大きく、免疫力の指標であるIg-A(免疫グロブリンA)の上昇もまったく同じ傾向がみられた。

触れる施術をすることは、触れる人自身にとってもよい効果があるのだ。

これは単に触覚刺激がオキシトシンを高め、ストレスホルモンを低下させたということではない。むしろ相手を思いやるような「心」がとても大事だといえる。「ここが気持ちよいだろうか」「苦痛を減らしてあげよう」というような思いやりのある心を持ちながら触れることで、施術者の境界が拓かれ、その結果として触れる人自身へのメリットが出てくるわけだ。

 

他者に触れる、他者から触れられる、どちらも自分を知る方法だと言われます。

同書の中には、触れることで体温が同調してくる、ミラーニューロンの働きで、相手と顔を合わせるだけで表情が同調する、その結果、脳内の血流が変化し同調して、自律神経やホルモンも同調するといった可能性があると書かれています。

また、AEAJ認定アロマセラピスト、鍼灸マッサージ師、マザーズオフィス教育ディレクターの中安一成さんは、「触れる側は手を通して、呼吸、体温、柔らかさといった相手の状態を受け取ることができます。触れられる側は、自分の凝っているところ、柔らかいところ、呼吸などを客観的に感じ、内面と向き合うことになるでしょう。触れる側の“手”を通じて互いが感覚を共有する。どちらも同じことを感じ、リラックスしている状態が生み出されます」と仰っています。

 

【心】体内での特定の部分への意識を集中させる

【心】自己の身体に対する認識を高める

 

 以上のようなタッチングの効果に、使用するオイル、トリートメントの技法などの違いも加わると、その効果は計り知れないものがあります。

 

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アロマテラピートリートメントのタッチングは、家族のコミュニケーション手段の一つとしてもおすすめです。

うちの子どもたちは「マッサージしてー」「オイル塗ってー」と言い、触っている最中も目をつむって「気持ちいいー」、時には「こちょばいーー」と、とても嬉しそうですよ。その後、子どもたちの心の中には、やってあげたい気持ちも生まれるようで、小さい手で私の背中をペタペタと触ってくれるのですが、なんともいえない幸せに包まれます。

普段のコミュニケーションがなかなか難しいと感じている思春期のお子さんに、「ちょっとマッサージさせてくれない?」と声をかけると、しぶしぶ背中を貸してくれるという話を聞いたことがあります。トリートメント中は動けませんから、こちらのもの!我が子の背中を撫でながら、親子の会話ができる時間を確保できてしまいます。

子どもが元気がないとき、何か抱えてつらそうにしているとき、親子関係がうまくいってないと感じるとき、言葉とは違う手段「触れる」ことで、想いを伝えてあげられるといいのではないでしょうか。

また、介護、入院中の身内にも、マッサージさせてねと言って手足をさすってあげるとすごく喜んでもらえます。

トリートメント後も、室内にしばらくアロマの香りが漂っていると、巡回に来られた看護師さんたちが「あぁいい香りですね」と言って深呼吸され、ナースステーションに戻っていかれます。入院中はなにかと不便や不安があり、家族は何かしてあげたいと思っても、実際してあげられることが少なく、もどかしさを感じる中で、癒し癒される時間を持つことができます

伯父は入院中に「アロマ使ってるとさ、看護師さんたちに『○○さんのお部屋はいつもいい香りがする』と評判がいいとよー!」と喜んでいました!!個室であれば、ディフューザーを持ち込んで好きな香りで気分転換というのも、大丈夫なところが多いのではないでしょうか。

介護のなかでは、さすった足の先に温かさが戻ったり、表情に明るさが戻ったり、言葉の数が増えたりといった変化を目の当たりにします。介護される側だけでなく、介護する側にも、アロマテラピートリートメントで心と体の緊張や負担を少しでも軽くしてあげると、とても喜ばれますよ。触れる幸せ、笑顔でありがとうと言ってもらえる幸せをくれるアロマテラピートリートメントを行うひと時は、家族のかけがえのない時間となります。

 

どうぞ、アロマテラピートリートメントを体験して、その心地よさを体感してみてください。いいなぁと思われたら、次はぜひご自分でトリートメントを学んで、コミュニケーションの一つとして日常に取り入れ、大切なご家族やご友人のためにお役立てください♡

 

aroma care work

「自然とアロマとハーブと栄養」がテーマ。
「こころ」と「からだ」の健康と美のために、care & workをお役立てください。

場所:福岡市南区大野城市
講師・セラピスト:きのしたちなつ

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ご予約・お問合せ先

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