16.香りによる脳の変化
今年も5月に、日本アロマ環境協会（AEAJ）アロマテラピー検定試験が実施されます。今回が第40回目になります。
アロマテラピー検定で基礎知識を習得することにより、さまざまな場面で植物の香りを役立てられるようになります。また、さらに学びを深めることで、アロマテラピーのプロフェッショナルを目指すこともできます。
その検定1級の試験範囲である、「アロマテラピーのメカニズム」についてよく分からないと仰る方が多いそうですが、最初は耳慣れない用語を覚えるのが一苦労だと思います。しかし、アロマテラピーを理解する上で大変興味深く重要な内容で、香りって凄い！とその奥深さを感じていただけると思います。
今回はその「香りを感じるメカニズム」と「幸せな毎日」の関係についてです。
鼻から吸い込まれた香り分子は電気信号に変換されて脳に伝わります。
香りの伝達経路には３つあります。
前頭葉に伝わるルート。
海馬につながるルート。
これらの情報が結びついて、香りを認識します。
①扁桃体に作用して好き嫌いなどの好みや感情を呼び起こす。
②視床下部 自律神経系、内分泌系、免疫系に情報を伝達。
③前頭葉で香りのイメージが作られ香りを認識。
④海馬に作用して記憶を喚起。昔の記憶がふっとよみがえる。
喜怒哀楽の感情や欲求などの情動を司る扁桃体と、記憶を司る海馬は、脳の大脳辺縁系という領域にあり、情動脳とも呼ばれています。心地よいと感じる香りが、過去の楽しい記憶と結びつき、気分に作用します。
これが、香りは脳で感じると言われる所以です。
ある実験では、まったく同じナイキのスニーカー２足を別々の部屋で消費者に評価させた。片方の部屋は花の芳香で満たされ、もう片方の部屋は無臭だ。その結果、優に84％の被験者が、香りのする部屋で評価したスニーカーのほうが優れているとした。
ある実験でナイトクラブをオレンジ、ペパーミント、海の香りで満たしたところ、客が踊っている時間が長くなるとの結果が出た。後の聞き取り調査では、香りのするクラブの客のほうが、より楽しい時間を過ごし、より音楽を気に入ったと答えた。
また別の実験では、ほかの機能性はまったく変えなくても、シャンプーの香りを変えただけで、被験者は「泡立ちがよくなった」「すすぎがしやすくなった」「髪のつやがよくなった」と感じることがわかった。
さらに別の実験では、良い香りにさらされていると、交渉に対する対抗的姿勢の減少が見られたといいます。特に男性より女性の場合で、無臭の場合と香りがある場合の譲歩した％を見ると、約4倍の好成績をあげたそうです。
香りによる好印象は、評価UP、満足度UPに結びつき、その結果、譲歩を引き出したり購買意欲につながったりします。これは、営業、販売、サービス業、さまざまな職場や職種の方にも活用していただけそうですね！（香りの好みには個人差がありますので、やりすぎには注意です！）
また、嗅覚器官から大脳辺縁系までの距離は短く、仲介する神経の数も少ないため、より多くの神経を経由して大脳辺縁系に到達する視覚や聴覚などの信号よりも、香りの信号はいち早く伝わります。
香りが脳に届くまで、わずか0.2秒！
頭で「考える」よりもはるかに速いスピードで「感じている」ことになります。つまり、目で見たり、音を聴いたりするよりも、香りを嗅ぐほうがより速く感情や記憶に働きます。
香りは、前述の実験のように相手に好印象を与える効果的な使い方ができるだけでなく、お勉強、家事、育児、スポーツ、外出先と、様々な場面で、瞬時に、自分の気持ちを切り替えることに利用できるのです。
では、たくさんある香りの中でも、なぜ「精油」なのか。
アロマテラピーで使用する精油が注目されているのは、感情コントロールに直結する成分を有しているからです。
精油のひとつひとつの香りには、それぞれの作用があります。
安心感、鎮静、高揚感、多幸感、慰め、癒し、明るく元気にさせてくれる香りが存在するのです。
幸せの鍵は、感情のコントロールと言われます。他者とのコミュニケーションも大切ですが、自分とのコミュニケーションも大切です。自分の感情といかに付き合っていくか。
どんな出来事であれ意味づけをするのは自分です。「ピンチ」を「チャンス」に変えて前へ進んでいけるように、香りのチカラを借りてみてはいかがでしょうか。
アロマテラピーは「幸せな感情をつくり、体の機能を整えて、幸せな生活をつくる」ことに寄り添ってくれる頼れる存在です。
香りによる脳の変化を上手に利用して、健康で幸せな毎日にいたしましょう♡
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